失われた貧民窟を求めて

現在、ワイルドバンチ研究所の第一義は、
人口・経済・技術の隔たりによって引き起こされた、都市/地域における人的ネットワークの衰退(=疲弊地区)に対して、プロジェクトの立案まで視野に入れて研究、分析をおこなうことにありますが、最近はその「疲弊地区」の参照形態として、明治期から戦後にかけて東京に実際に存在した「スラム/貧民窟」に関心を抱いております。

明治末期には『最暗黒の東京』『日本の下層社会』(はてなさん、リンクお願いします。あ、貼られませんね。)のような貧民窟ルポルタージュ文学が隆盛したことから、明治期東京では都市の発展とともに各地にスラムが発生し、貧富の格差が現在よりも目に見える形で都市のなかに存在したと考えられます。しかし、ご周知の通り、現在の東京には一般的には「スラム/貧民窟」と呼ばれる場所はありません。明治期から昭和にかけて存在したスラムもクリアランス・スプロールのよって消滅したと考えられております。

では、現在の「疲弊地区」とは何なのか。
現段階でのわれわれの見解は「スラム/貧民窟」に対して共通点もあるが相違点もあるだろう、というところですが、議論の中で「やはり現在の疲弊とは何か、もう少し明確にしなくては」ということで一旦の終着に。
ううん、難しいですね。